乳がん患者がつくったピンクリボンビル(5周年によせて)

ピンクリボンビル
 2008年6月に広島市中区三川町にオープンした「ピンクリボン39ビル」。先月でまる5年となりました。オープン当時、「患者が企画した医療ビル」として、マスコミなどから大変多くの取材をいただきました。
 この企画は、乳がん患者友の会きららの会員さんを中心に、乳がん患者が必要と考える「信頼の医療体制」や「医療環境」をカタチにしたもの。病院や病気とどう向き合うか、どんな環境が望ましいか、何が必要だったかなど、「乳がん」を体験したからこそわかること。ハード・ソフトの両面で「専門性」「信頼性」「安心」の全てを兼ね備えた医療施設があればいい、そんな乳がんと闘ってきた女性たちの声から誕生したのです。
 多くの女性たちが「乳がん」への不安や関心を持ちながらも、どこの病院へ行けば良いのか、どこの病院なら安心して信頼できる検診を受けられるのかご存知ないという現状がありました。この医療施設に行けば病気の不安に応じてくれ、信頼して専門的な検診・治療が受けられる、そんな女性たちの思いをカタチにしたピンクリボンビルをつくることは、単なる乳腺専門の医療施設をつくるのではなく、女性のために安心して信頼できる医療環境を提供することになると考えました。またピンクリボンビルを私たち患者が企画し、つくることによって、そこは乳がん検診の大切さを多くの人に伝える発信基地となるはずだと希望を持ちました。
 この企画を事業化するに当り、日頃から行っているピンクリボン活動(乳がんの早期発見・早期治療を啓発する活動)や、患者さんに情報を提供する「きららピンクリボンフォーラム」などの活動に加え、患者さんや検診者にアンケートを実施するなどして多くの女性たちの声やデータを収集しました。企画のポイントとして、以下のようなことを考えました。
   ・乳がんの専門的な検診・治療が受けられる。
   ・検診から治療までが、同じ施設の中で可能である。
   ・利便性に優れ、来院しやすい立地条件。
   ・医療だけではなく、メンタル面もサポートできる環境。

 検診においては、まず受けやすい環境でなければならないと実体験からも感じていました。「検診」の必要性を認識しながらも、先送りにしてしまう「検診」。そんな検診への敷居の高さを取り払うこと。「女性のドクター」が適任であると大学病院の外来で実施させていただいたアンケートの結果からもわかっていました。ただ女性のドクターであれば誰でも良いというのではなく、「検診」に「情熱」を注いでくださるドクターでなければなりませんでした。私の頭には、稲田陽子先生しか思い浮かびませんでした。当時稲田先生は九州がんセンターに赴任しておられました。久しぶりにかかった私からの電話に、稲田先生は大変喜んでくださり、私が再発後も元気でいることを安堵して下さいました。そして、私が近況報告に続けて、「先生、私たちと一緒に検診クリニックをつくって下さいませんか」と言うと、たいへん驚かれました。開業などまったく考えておられなかった稲田先生ですが、私たちの熱い思いを受け入れて下さり、ご開業の英断をして下さいました。
 治療においては、その専門性はもちろんのこと、私たち患者の心に寄り添って下さる、信頼できる乳腺医療を実践して下さるドクターでなければなりませんでした。2007年当時、香川直樹先生は、県立広島病院で乳腺医療に取り組んでおられました。その香川先生のもとへ、フォーラムのポスターをお届けするため、診療終了後の遅い時間に外来をお訪ねした際、私は思い切って「先生、私たちと一緒に、患者の心に寄り添う乳腺クリニックをつくって下さいませんか」とお話しました。おりしも夕立が来て、急に激しく雨が降り、雷が鳴り響きました。香川先生は、その雷にうたれたかのように、私の言葉に驚き、まじまじと私の顔をご覧になりました。しかし、やさしく、静かに私たちの熱い気持ちを聞いて下さったのでした。

 こうしてつくりあげたピンクリボンビル。稲田陽子先生が院長の「中央通り乳腺検診クリニック」と香川直樹先生が院長の「香川乳腺クリニック」。この二つのクリニックを併せて「広島ブレストセンター」と位置付け、基幹病院とも連携することにより、地元広島で「乳がんの早期発見」を啓発し、「乳がん検診」を受けやすい環境を提供するために、検診から治療、メンタルケアにいたるまで、トータルにサポートできる医療施設が誕生したのです。最近では、全国各地で、乳腺の検診や治療を専門とする施設も増えてきましたが、「広島ブレストセンター」は単に女性ドクターや女性スタッフが検診を行うだけではない、他の施設とは「似て非なるもの」と自負する、乳がんを経験した患者さんたちをはじめとした女性たちの声から誕生した医療施設なのです。
 この二つのクリニックを併せた「広島ブレストセンター」で、この5年間に乳がんと診断された症例数は、約800例にのぼります。また中央通り乳腺検診クリニックのマンモグラフィ検診での発見率は0.76%、陽性反応的中度は11.1%で、他と比べて非常に高い精度を誇っています。
  5年前にご英断して下さった香川直樹先生と、稲田陽子先生に心から感謝を申し上げるとともに、日々、研鑚を重ねてゆかれているお二人の先生に敬意を表します。また私たち患者がつくった企画に賛同して下さり、「社会貢献となるなら」とビルを建てて下さった女性オーナー様にも、心より感謝しております。
 ピンクリボン39ビルには、2010年に永井宣隆先生が、広島女性クリニック(婦人科一般)を開業して下さり、これにより同じビル内で乳がん検診と婦人科検診が受診できるという、多くの女性が要望していた形になりました。私たち「乳がん患者友の会きらら」は、このピンクリボンビルが到達点ではなく、スタート地点だと考えています。患者さんのために、女性の健康を守るために、次のプロジェクトへむかって発進!!


大橋先生

 いっちゃんは、複数のがん、再発を経験しながらも強く乗りこえ、いつも明るく、がん患者さんの支援活動を続けて下さっている女性。そのいっちゃんが、いつもとは明らかに違った、困惑した声で電話をかけてきました。がんではない別の病気で、主治医から「このまま徐々に数値が悪くなり、あと10年ぐらいかな」と言われたとの事。余命宣告?寿命が10年なの?いっちゃんは主治医との会話を冷静に私に伝えようとしますが、声は震えています。
 私の頭にすぐに浮かんだのは大橋先生のこと。いつもながら無理をお願いし、いっちゃんは検査結果等の資料を持って大橋信之先生の元へ。本当は後の予定があって多忙でいらっしゃったのに、丁寧にいっちゃんにご対応くださいました。
 いつもいつも大橋先生には、たいへんなときばかり頼ってごめんなさい。さちこさんの時も、かよちゃんの時も、その他たくさんの患者さんのこと、フォローして下さってありがとうございます。私が感謝を述べると、大橋先生は「困ってつらい思いをしている方がおられるなら、その方の為に全力を尽くす。それが自分の目指す道です。」とかっこいいことを言いながらも、そのあとに「と、偉そうなことを言いながら、たいしたことはなぁ〜んにもしてません。」と照れ隠しの一言を付け加えられました。そういえば10年近く前、まだ大橋先生と知り合う前に、当時製薬企業に勤めていた、現在はNPOキャンサーネットジャパンの事務局長の柳澤昭浩さんが「広島には、大橋先生という真のオンコロジストがいる」と教えてくれたことがありました。その時、手帳にしっかりと名前をメモしておきましたが、数年後に別人から紹介された時は、その偶然に感謝しました。大橋先生の診察を受けた後のいっちゃんは、冷静さをとりもどし、いつものポジティブないっちゃんに戻っていました。いつも大橋先生との会話では「医の良心」という言葉を思い出します。今日は100万回、大橋先生にありがとうを言いたい、そんな気持ちの日。

大橋先生

人工乳房の保険適用に思う

新聞記事

 12日に開かれた厚生労働省の中央社会保険医療協議会で、乳がんの全摘手術の乳房再建に使用する人工乳房の保険適用が認められました。
 もちろん国内では初めてのこと。昨日の新聞の一面にも「人工乳房に保険適用」の文字が躍りました。
 これまで医療者、患者さんなど多くの方が、再建手術の保険適用の承認に向けて、たいへんな努力をされてこられました。このニュースは、多くの乳がん患者さんに朗報となりました。
 ただ残念なのは、今回保険適用が認められた人工乳房はアラガン社のラウンド型(円型)だけ。形状や材質がより自然に近いアナトミカル型(しずく型)は、まだ承認申請中とのこと。最近の乳房再建で最も多く使われるというアナトミカル型が承認されなかったのは、厚労省が安全性を慎重に慎重に考えているから?それとも価格収載の折り合いがつかなかったから?など、いろいろと考えてしまうけど、患者さんが納得して治療が受けられるように、一日でも早く承認されることを願うばかりです。
 乳房再建は、乳がん治療のひとつの過程です。乳がんという大変な病を患っているのに、これまで自家再建には公的保険が適用され、人工乳房には適用されなかったというのは、本当におかしな話です。
 先日話題になったアンジェリーナ・ジョリーさんが受けた遺伝性乳がんの予防切除の件も含めて、一日も早く乳がん治療の選択肢が広がることを望みます。とはいえ、今回の人工乳房の公的保険適用は大きな一歩であるのは確かです。公的保険が適用されるよう力を注がれた関係者のご努力に
(私たちも署名運動とかがんばったし)、心から、敬意を表します。



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プロフィール

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1958年5月生まれ
府中中央小学校(安芸郡府中町)、府中中学校、広島県立観音高等学校
1981年 広島女学院大学卒業、
    卒業後住江織物蟠侈
1985年 大阪市立中学校教諭
2003年 乳癌患者友の会「きらら」
    理事長
この頃から「医療=患者+医療提供者+行政でつくるもの」というコンセプトを基に、本格的なピンクリボン活動に奔走。がん検診啓発キャンペーンなど様々なプロジェクトを実践していく。
2008年 広島大学大学院
    総合科学研究科非常勤講師
   (〜2011年)

<家族>
夫、実母
<趣味>
おいしいものを見つけて食べること
花の写真を撮ること
<好きな言葉>
「明日はきっといい日」

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書いた記事数:46 最後に更新した日:2014/07/30

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